4.5µAリチウムイオン・バッテリ保護回路
リチウムイオン・バッテリ低電圧ロックアウト
超低消費電力の高精度低電圧ロックアウト回路を図1に示します。この回路はリチウムイオン・バッテリの電圧をモニタして、バッテリ電圧がロックアウト閾値を下回った場合、バッテリを過放電から保護するために負荷を切り離します。バッテリ電源使用の製品を放電状態のまま保管すると、バッテリが完全放電してしまうおそれがあります。放電状態では、保護回路への電流によりバッテリは継続的に放電します。バッテリが推奨放電終了電圧未満に放電してしまうと、全体的なバッテリ性能は低下し、サイクル寿命が短くなって通常より早く使用できなくなってしまうことがあります。これに対し、ロックアウト電圧の設定が高すぎる場合は最大バッテリ容量を利用できなくなります。
例えば、バッテリロー・インジケータの点灯後しばらくして携帯電話の電源が自動的にオフになる場合は、ローバッテリ・モードの動作であることを示しています。この状態で電話をどこかに置き忘れて、数ヵ月後に発見した場合でも、図1に示す回路は4.5µAの電流しか消費しないので、バッテリを過放電により損傷させてしまうことはありません。このような低電流では、リチウムイオン・バッテリが放電終了電圧に達するまでに要する時間が大幅に延長されます。他の保護回路は通常これより大きな電流を必要とするため放電速度が速く、バッテリ電圧はより短い時間で安全限度未満に低下してしまいます。バッテリが安全限度未満まで放電し得るような構造の場合は、回復できない容量損失が生じます。
マイクロパワー電圧リファレンスとオペアンプ
LT1389は、ありふれた電圧リファレンスではありません。消費電流が極めて小さいため、最大限のバッテリ寿命と優れた精度が必要とされるアプリケーションに理想的な選択肢となっています。必要電流はわずか800nAで、初期電圧精度は0.05%、最大温度ドリフトは20ppm/ºCです。これは、商用温度範囲に対して0.19%、工業用温度範囲に対して0.3%の絶対精度に相当します。同等の精度を備えた標準的なリファレンスに必要な電流の1/15で動作するLT1389は、現在利用できる電圧リファレンスの中で最も低消費電力です。LT1389高精度シャント電圧リファレンスには、1.25V、2.5V、4.096V、5.0Vの4つ の 固 定 電 圧 バ ージョンがあり、商用および工業用温度グレードの8ピンSOパッケージで提供されます。
低消費電力(IS < 1.5µA)で高精度という仕様によって、LT1495レールtoレール入出力オペアンプは、LT1389との理想的な組み合わせが可能な製品となっています。極めて低い電源電流と優れたアンプ仕様が結びつき、入力オフセット電圧は最大375µV、ドリフトは0.4µV/ºC(代表値)、入力オフセット電流は最大100pA、入力バイアス電流は最大1nAです。2.2V~±15Vの電源範囲に対し、デバイス特性はほとんど変化しません。このアンプはバイアス電流とオフセット電流の値が小さいので、大きな誤差を発生させることなくメガオームレベルのソース抵抗を使用できます。LT1495は、標準デュアル・オペアンプ・ピン配置のプラスチック製8ピンPDIPパッケージとSO-8パッケージで提供されます。
ほとんど電流を消費しないLT1389とLT1495は、UVLO回路やその他多くのバッテリ・アプリケーションに理想的な選択肢です。
回路の動作
この回路はシングルセルのリチウムイオン・バッテリ用にセットアップされており、ロックアウト電圧(保護回路がバッテリから負荷を切り離すときの電圧)は3.0Vです。この電圧はR1とR2によって設定され、ノードAで検出されます。バッテリ電圧が3.0V未満に低下すると、ノードAがノードBの閾値未満に低下します。ノードBの閾値は次式で定義されます。

次いでU1の出力がハイにスイングし、SW1をオフにしてバッテリから負荷を切り離します。しかし、負荷が切り離されるとバッテリ電圧が回復して、ノードAもリファレンス電圧以上に上昇します。これによりU1の出力がローに切り替わって負荷を再度バッテリに接続し、バッテリ電圧は再び3.0V未満に低下します。このサイクルが何度も繰り返されて発振が生じます。
この状態を避けるために、R5を追加することでトリップ・ポイント周辺に適度のヒステリシスを発生させます。U1の出力がハイにスイングしてSW1がシャットオフされると、ノードBの電圧がノードAより42mV高い値まで上昇して、トリップ・ポイント周辺での発振を防ぎます。下の式を使うと、この回路のヒステリシス量は92mVと計算されます。したがって、バッテリを接続する前にVBATTが3.092Vより高い値まで上昇している必要があります。

最大推奨放電電流時の最大ESRについては、バッテリのメーカーにお問い合わせください。必要な最小ヒステリシスを求めるには、これら2つの値をかけ合わせます。
高精度の実現
最も厳しい条件下での電圧モニタ精度は0.4%より良好な値を示します。興味深いのは、バッテリの寿命と容量が放電深度と直接関係している点です。リチウムイオン・バッテリは、完全放電させずに部分放電に止めることでサイクル・ライフを延ばすことができます。また、これとは逆に、完全放電させた場合はリチウムイオン・バッテリの使用時間を延ばすことができます。最適な放電終了電圧で負荷を切り離せば、これらの両面で理想的な結果を得ることができます。これを実現するには、システム全体の精度が求められます。例えば、最適ロックアウト電圧を3.1Vに設定した場合、全体精度5%のシステムでは精度が±155mVとなり、2.945Vまたは3.255Vでカットオフが実行されます。3.255Vのロックアウト電圧では、最大容量は得られません。加えて、動作範囲が狭くなり、完全充電されたバッテリの電圧は4.1Vとなります。全体精度0.4%のシステムでは、ロックアウト電圧は3.088Vまたは3.112Vとなって精度が12倍以上向上し、最適な形で最大容量が実現されます。さらに、負荷が分離された状態で保護回路に流れる電流はわずか4.5µAです。このように、保護回路はバッテリの過放電を防ぐことによって機能します。
まとめ
性能と消費電流のトレードオフは必要ありません。LT1389ナノパワー高精度シャント電圧リファレンスとLT1495 1.5µA高精度レールtoレール入出力オペアンプは、電流をほとんど消費することなく最大限の性能を実現します。
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