SIMOでヒアラブルの寿命を延長する
要約
統合レベルが低い一般的なヒアラブル ソリューションは、PCB スペースと消費電力の両方の点で非効率になります。一方、SIMO (Single-Input Multiple-Output) アーキテクチャは、より小さなスペースでより多くの電力を効率的に供給できるため、ヒアラブル デバイスのバッテリ寿命の延長とフォーム ファクタの小型化が可能になります。
はじめに
ヒアラブル機器は、ワイヤレスステレオイヤホンとフィットネ スモニタリングが交差する新興市場です。しかし、小型形状の ため電子回路の小型化の課題が高まり、バッテリ寿命の課題 も増えます。この記事では、非常に小さいスペースで高効率 の給電を行うとともに、超小型ヒアラブル機器のバッテリ寿 命の延長を可能にする、革新的なパワーマネージメントシス テムを紹介します(図1)。
図1. 小型ワイヤレスイヤホンは電子回路のサイズとバッテリ寿命 の課題をもたらします。
標準的なパワーマネージメントの実装
標準的なヒアラブルのパワーマネージメントシステムを図2 に示します。パワーマネージメントIC (PMIC)はバッテリチャ ージャ、バックコンバータ、およびLDOを使用してセンサーに 給電します。第2のIC (デュアルLDO)は、マイクロコントロー ラ、Bluetooth®、およびオーディオに給電します。簡略化のた めに、外付けの受動部品は示していません。
図2. 標準的なヒアラブルの電力フロー図。
標準的な電力ツリー
標準的な実装の完全な電力ツリーを図3に示します。LDOを 多用する結果として、全体的な効率はわずか69.5%です。
図3. 標準的なヒアラブルの電力ツリー図。
標 準的なソリューションサイズ
図2の電力フロー図のすべての能動および受動部品が、図4 に示すソリューションに含まれています。
この標準的ヒアラブルソリューションは、約41.5mm2 のPCB面 積を占めます。比較的低レベルの集積、および複数のLDOと より大型の受動部品を使用している結果として、スペースと電 力の両面で非効率的なソリューションとなっています。
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図4. 標準的ヒアラブルソリューション (41.5mm2)。
革新的ソリューション
図5のパワーマネージメントIC(MAX77650)は、センサー (3.3V)、マイクロコントローラ(1.2V)、Bluetooth、およびオーデ ィオ(1.85V)への給電に必要なすべてのバッテリチャージャお よび安定化を1つのチップに内蔵しています。この小型PMIC によって、複数のパッケージの使用によるスペースの無駄が なくなります。SIMO (単一インダクタマルチ出力)バックブース トレギュレータは、1つのインダクタを利用する3つのスイッチ ングレギュレータを実装し、必要なスペースを削減します。さ らに、高周波動作によって小型インダクタの使用が可能なた め、必要なスペースがさらに最小化されます。ノイズに敏感な 負荷用に1つのLDOが内蔵されています。簡略化のために、外 付けの受動部品は示していません。
図5. MAX77650高集積PMIC。
MAX77650の電力ツリー
図6は、このPMICの電力ツリーと各レギュレータの出力電圧、 負荷電流、効率、および消費電力(PD)を示しています。4つの 負荷のうちの3つは、高効率SIMOスイッチングレギュレータ を介してリチウムイオンバッテリに接続されます。第4の負荷 は、LDOによって2.05VのSIMO出力から給電され、90.2%の 効率(1.85V/2.05V)を実現します。全体的なシステム効率は 78.4%という優れた値です。
両方のソリューションの電力性能の比較を表1に示します。
図6. MAX77650の電力ツリー。
Parameter | Traditional Solution | SIMO | SIMO Advantage |
Li+ Battery Current | 49mA | 43.4mA | SIMO saves 5.6mA |
System Efficiency | 69.5% | 78.4% | SIMO is 8.9% more efficient |
Miminum Li+ Battery Voltage | 3.4V due to 3.4 LDO | 2.7V | SIMO allow more discharge |
SIMOソリューションの優れた効率はバッテリ消費の大幅な 低減につながるとともに、より広い動作範囲(最小2.7V)によっ てヒアラブル機器の非テザー動作時間が延長されます。
SIMOコンバータ
図7は、 SIMOコンバータのブロック図を示しています(インダ クタ以外の全部品を内蔵しています)。このアーキテクチャの 利点は、1つのインダクタを利用する3つのスイッチングレギュ レータを組み込むことができる点にあります。これらのスイッ チングレギュレータは最小限の損失で電力を供給し、巧妙な アーキテクチャによって各スイッチングレギュレータ用に1つ のインダクタを備える必要がなくなります。
図7. SIMOの電力ブロック図。
インダクタ電流共有
ヒステリシスを備えた、断続電流制御モードで、インダクタは M1およびM4が「オン」の状態でVIN/Lのレートで電流を増大 させます。図8に示すように、設定された上限に達した時点 で、電流はM2およびM3_xトランジスタを介して選択された 出力に供給されます。出力への給電は、出力コンパレータに よって要求された順番で行われます。
図8. SIMOの電流波形。
バックブーストアーキテクチャの特長
ヒアラブル機器を標準的なステレオBluetoothヘッドセットか ら差別化する主な特長の1つは、1つまたはそれ以上の光ま たは慣性MEMSセンサーを内蔵していることです。光センサ ーは、内蔵LEDからの光の反射を使用して血中酸素飽和度、 心拍数、またはその他のバイタルサインを測定します。十分な 光強度を生成するために、LEDは通常のリチウムイオンバッ テリより高い電圧範囲(4V~5V)で動作する必要があります。 設計者は、バックブーストをシステムに追加するか(もう1つの ICが必要)、もう1つのインダクタとより多くのコンデンサを追 加するか(貴重な面積と体積を消費)、または信号対ノイズ比 を犠牲にするか(不正確な測定値や劣悪なユーザー体験のリ スク)という、困難な選択を迫られます。SIMOバックブーストア ーキテクチャは、任意の1つの出力を所望の電圧(最大5.5V)に 設定してLEDを駆動し、センサー性能を最適化することによっ てこの問題を解決します。
より小型のスペースでより長いバッテリ寿命
小型のMAX77650 PMIC (2.75mm x 2.15mm x 0.8mmの WLP)は、SIMOスイッチングレギュレータおよび効率的にバイ アスされたLDOによって、最小限の損失で電力を供給し、PCB スペースは標準的な実装の半分以下です。図9のソリューショ ンレイアウトは、すべての能動および受動部品を考慮に入れ ています。
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図9. MAX77650のソリューション (19.2mm2)。
総占有基板面積は、わずか19.2mm2 です。さらに、MAX77650 の消費電流はスタンバイモードでわずか300nA、アクティブ モードで5.6μAです。これによって貴重なバッテリ寿命が節 約され、充電間の使用時間を延長しながら可能な限り最小の バッテリを使用することができるため、この点でもシステムサ イズの削減に貢献します。
その他のオプション
MAX77651も同様のデバイスですが、より高い出力電圧範囲を必要とするアプリケーションに対応します。表2に、MAX77650と MAX77651の出力電圧範囲および電流の概要を示します。
Regulator Name | Regulator Topology | Maximum IOUT (mA) | VIN Range (V) | MAX77650 VOUT Range/Resolution | MAX77651 VOUT Range/Resolution |
SBB0 | SIMO | Up to 300* | 2.7 to 5.5 | 0.8V to 2.375mV in 25mV steps | 0.8V to 2.375mV in 25mV steps |
SBB1 | SIMO | Up to 300* | 2.7 to 5.5 | 0.8V to 1.5875mV in 12.5mV steps | 2.4V to 5.25mV in 50mV steps |
SBB2 | SIMO | Up to 300* | 2.7 to 5.5 | 0.8V to 3.95mV in 50mV steps | 2.4V to 5.25mV in 50mV steps |
LDO | PMOS LDO | 150 | 1.8 to 5.5 | 1.35V to 2.9375V in 12.5mV steps | 1.35V to 2.9375V in 12.5mV steps |
*他のSBBxチャネルと共有の容量 |
結論
標準的なヒアラブルソリューションは集積度が低レベルの ため、PCBスペースと消費電力の両面で非効率につながりま す。MAX77650およびMAX77651 PMICは、独自のSIMOアー キテクチャによって、より小型のスペースでより多くの電力を 効率的に供給し、ヒアラブル機器のバッテリ寿命の延長と形 状の小型化を可能にします。
この設計ソリューションの同様のバージョンは、2017 年 8 月 3 日に Power Systems Design に最初に登場しました。
この記事に関して
産業向けソリューション
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