スモールループアンテナ:パート2―フィールド試験

2006年07月31日

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要約

アンテナの特性を判定する唯一の方法は、理論のみでは実際の結果を予測することができないため、その性能を測定する方法です。アンテナによって生成された電界は周囲環境のすべてのものと相互作用するため、非常に複雑です。この複雑性を考慮して、試験、規格、およびそのニュアンスに対応する設備が整った経験豊富で広く認められたアンテナラボを利用すると、アンテナの測定および分析の成功率が向上します。

このアプリケーションノートは、リモートキーレスエントリ(RKE)アプリケーション用のアンテナ理論および設計に関する2部構成の分析のパート2です。このアプリケーションノートのパート1「スモールループアンテナ:パート1—シミュレーションおよび応用理論」はアンテナ分析の複雑性を説明し、複数のシミュレーション試験を紹介し、試験結果を検討して、短絡ループまたはオープンループアンテナ設計の利点と制約事項を比較しています。解説のパート2であるこのアプリケーションノートは、FCCがデバイスの認証用に規定する手法と試験パラメータの一部を取り入れた実際のフィールド試験に焦点を合わせています。パート1で紹介したマキシムのアンテナボードを使用して、屋外の「実環境」でのフィールド試験が実施されました。パート1で紹介した理論結果は、実際のフィールド試験データと比較されます。

このアプリケーションノートには実際のFCC試験の実施方法は記載されていません。それはこの解説の範囲外です。そうではなく、デバイスの試験時にどのような設計問題と環境問題が発生するかを読者の皆様が把握するのを手助けすることが目標です。要するに、このアプリケーションノートの目標はFCC認証の成功を手助けすることです。

目次

  1. フィールド試験の方法
    1.1. 試験区域
    1.2. 較正
    1.3. ピーク電界の較正
    1.4. 偏波に関して
    1.5. 3mの距離での電界強度の推定
    1.6. 水平偏波と垂直偏波の電界変動
    1.7. 近傍界(3m)におけるグランドバランスの検討
    1.8. アンテナシステム用の擬似適合試験
    1.9. センスアンテナの係数と基準測定誤差の推定
  2. 被測定デバイス(DUT)の測定
    2.1. ミスマッチの考慮事項
    2.2. DUTにもたらされる出力(Pアンテナ)
    2.3. DUTの試験機器および試験マトリックス
  3. ピーク電界の測定
    3.1. 測定データ
  4. まとめ
    4.1. 概要
    4.2. 結論

付録A
A.1. 3mの距離への電界強度の関連付け

付録B
B.1. 周期RKE伝送に関するFCCパート15の電界強度の考慮事項の概要
B.2. 一般要求事項
B.3. FCCおよび試験方法
B.4. 保護帯域

参考資料

1. フィールド試験の方法

1.1 試験区域


マキシムのアンテナ(図1)を試験するために使用された方法は、詳細なFCC認証試験ではありませんでした。そうではなく、今回の方法の目的は、無響室を利用せずにパート1のシミュレーション結果と比較して、アンテナ性能を検証することでした。専用のアンテナ試験区域で試験を実施しましたが、市販材と一般に入手可能なRF実験装置を使用して、試験環境とセットアップ測定をオープンフィールドで反復することができました。こうした測定結果をまさに実用的にするために、DUT (被測定デバイス)が、現実的な実環境での使用で遭遇するのと同様の地表反射を「体験」する必要がありました。また、試験場所(特に地表反射があるオープンフィールド)、アンテナ高の変更、およびDUTから受信アンテナまでの3mの水平距離に関するFCC要件もシミュレートしました。

図1. 3mの距離を基準にした測定

図1. 3mの距離を基準にした測定

FCCの適合試験は、デバイス放射体からの放射の電界強度が特定の距離で規定の電界強度を上回らないようにしています。放射は意図的な放射体(トランスミッタ)および意図的でない放射体(スパー、高調波、ディジタルノイズ)から発生する場合があり、これらの放射の制限値はアプリケーションとデバイス種類に応じて大きく変わります。今回の実験方法では、意図的でない放射体ではなく、アンテナ特性のみを測定しました。

上記のように、FCCの適合試験はデバイスから3mの距離でのピーク放射に焦点を合わせています。場合によっては、放射試験が10mの距離から基準にされ、他の放射試験は電界強度と照らして出力を測定します。付録Aに、これらの関係を少し説明しています。放射基準、距離、または電界強度をある基準で測定し、それとは別の基準に従って計算することができます。簡単にするために、マキシムの測定はすべて3mの距離で実施されました。

DUTの測定時に関連する2種類のアンテナがあります。すなわち、DUTのアンテナとセンスアンテナのアンテナです。今回の試験のセンスアンテナは、放射する(RKE)デバイスに面した空間を占める広帯域のUHF対数周期アンテナでした。このため、デバイスから受信(センス)アンテナまでの3mの距離が完全に正確というわけではありませんでした。また、このセンスアンテナは基準利得と物理的基準点を備える較正基準です。このアンテナは明確に印が付いた基準点を実際に2つ備えていました。すなわち、物理的中央部に近い基準点とアンテナの端にある基準点です。試験の基準点は、適合試験の種類に応じて異なります。図2は、こうした電界強度測定の場合には基準はアンテナの中央付近だったことを示しています。ノイズ耐性試験用の基準は通常、アンテナの端にあります。

図2. センスアンテナの図

図2. センスアンテナの図

試験のセットアップ(図3aおよび3b)用に、DUTが実際のアプリケーションを表すように回転台に物理的に設置されました。アンテナ試験区域は、無響材を使用せずに屋外で構築されました。シートメタルによって回転台全体と屋外のグランド区域が覆われ、試験区域を大幅に超えて展開するほぼ完全なグランドがもたらされました。直径約3mの回転台は約20度ごとにブラシを備え、面積が約400m2の屋外グランドで常時グランドされるようにしました。

図3aおよび3b. 試験区域のセットアップ状態

図3aおよび3b. 試験区域のセットアップ状態

センスアンテナはZ軸方向に移動する台上に取り付けられ、試験家屋で遠隔操作されました。ネジなどのこの台上のあらゆるものは不伝導誘電体(ファイバグラス材)でできているため、電界測定に干渉するものはありませんでした。またセンスアンテナは、(図4に示すように)垂直または水平偏波用に回転することもできました。

図4. 可変のZ軸支柱に取り付けられた(垂直偏波)センスアンテナ

図4. 可変のZ軸支柱に取り付けられた(垂直偏波)センスアンテナ

約40m離れた所に位置する試験家ではアンテナを遠隔操作し、センスアンテナが受信したものを測定しました。今回の場合は、レシーバとしてAgilentのスペクトルアナライザのみを使用しました(図5)。ソフトウェアによって、回転台が回転している間にセンスアンテナからの出力を記録する自動システムが稼動されました。このDUTは単なるアンテナであるため、信号発生器がレシーバで優れたS/N比を確保するのに十分な出力を供給しました。あらゆるものがダイポールに相関していたため、実際の出力は重要ではありませんでした。この場合には発生器を16dBmに設定しました。実際にDUTはおそらくトランスミッタを内蔵していたため、測定を干渉する同軸ケーブルの問題はありませんでした。この場合には、同軸ケーブルが使用されましたが、その影響はアンテナプロットに確認され、パート1のシミュレーションに非常に似ているように思われます。

図5. 試験区域および測定システム

図5. 試験区域および測定システム

1.2. 較正


等方性放射体は存在しないため、等方性アンテナに類似した最も近い単純な形式はダイポールです。ダイポールは架設するのが容易で、等方性ソースとの理論的な相違などよく理解されています。アンテナの文献によく記載されている2種類のダイポールがあります。すなわち、理想的ダイポールと半波ダイポールです。理想的ダイポールの遠方界は完全な穴のないドーナツとして数学的に表されます。これは、ダイポールエレメントに沿った実際の電流分配を考慮していません。このダイポールは穴のないドーナツであるため、エレメントの軸方向に電界やアンテナに垂直な最大電界はありません。

ダイポールと等方性放射体に等しいエネルギーを供給した場合は、より多くのエネルギーがダイポールに垂直に集中します。これはエネルギーが両端にとどまることができないためです。電界が完全な球形から変更されたため、ダイポールは指向性を持ち、等方性ソースに対する利得を備えているといわれています。理想的ダイポールの理論利得は、等方性ソースに対して1.76dB1です。理想的ダイポールは別の数学モデルであり、半波ダイポールとは異なります。半波ダイポールは理想的な数学ダイポールモデルではなくエレメントの電流からモデル化されているため、半波ダイポールは実際の物理的ダイポールアンテナをより現実化したものです(図6参照)。理論的には、半波ダイポールの較正基準は、等方性放射体に対して2.15dB2の利得を持っています。基準には、この測定値を使用します。

図6. 半波と等方性の遠方界パターンの比較

図6. 半波と等方性の遠方界パターンの比較

半波ダイポール基準は、両端において1/4λに調整された伸縮するエレメントを備えていました。ダイポールをセンスアンテナと同じ偏波で取り付けて、DUT測定時の基準を得るためにダイポール基準アンテナが測定されました。図7を参照してください。

図7. UHF高帯域および低帯域の基準ダイポール

図7. UHF高帯域および低帯域の基準ダイポール

基準ダイポールをDUTに置き換えると、測定電界は半波ダイポールに対する利得または損失を持つようになります。どの測定電界が等方性ソースに対応するかを判別するために、ダイポールに対する基準である測定値から2.15dBが除去されました。

出力(dBd)半波ダイポール - 2.15dB = 出力等方性ソース(dBi)


1.3. ピーク電界の較正


アンテナのサイドローブとグランドバウンスは、アンテナの較正および試験を実行する際に考慮すべき2つの主な要素です。センスアンテナを空間に延ばし、ピーク値を確認することによって、基準ダイポールのピーク測定値から較正が実施されました(図8)。このように較正することによって、システム内のすべての損失とセンスアンテナのどの利得も除去されました。これは、電界の測定値はすべて半波ダイポールのピーク電界と相関していたためです。

図8. 基準ダイポールの干渉の較正

図8. 基準ダイポールの干渉の較正

伝導性グランドは各電界を様々に反射するため、垂直および水平偏波の両方で較正する必要があります。

次の問題は、センスアンテナの放射パターンです。メインローブは幅広いペンシルビームですが、場合によっては指向性アンテナと関連するかなりのサイドローブがあります。

図9. グランド上の水平LP(対数周期)アンテナの高調波性能

図9. グランド上の水平LP(対数周期)アンテナの高調波性能

図9は、アレイに対して短い波長で駆動される際のグランド上の対数周期が等価のセンスアンテナのシミュレーションを示しています。波長が長くなるにつれて、サイドローブがシャープでなくなり、弱くなります。図9のシミュレーションは、センスアンテナから基準までのサイドローブのみを示しています。これは実際に使用された対数周期アンテナのシミュレーションではありません。Fは基本波であり、2Fおよび3Fはそれぞれ、LP(対数周期)設計を上回り、グランドから約1波長である第2次および第3次高調波です。さらにまた、Z軸の電界は接地の影響です。

図10. ピーク電界強度の検出

図10. ピーク電界強度の検出

図10は、ピーク電界がシミュレーションと実際の測定に応じてダイポールから測定される際のLPセンスアンテナの垂直位置を比較しています。また、サイドローブの影響とグランド効果を示しています。2つのアンテナ間のピークは、最大アンテナ利得の直接経路の組合せが相互に最適化された時に発生します。この写真内で、ダイポールが垂直に偏波され、センスアンテナが水平であることに注意してください。実際には両方のアンテナは同じ偏波状態です。較正のためには、高さはピークの検出を除き重要ではありませんでした。ただし、センスアンテナは基準やDUTよりはるかに上にすることができることに注意する必要があります。ピークが決定されると、基準ダイポールは基準値を得るために360度の全域にわたって回転台上で回転させられました(表1)。センスアンテナは、図10に示される高所に設置されたままでした。

図10は、電界ローブがTxおよびRxにどのように影響を与えるかを示しています。実際には電界ローブの影響はこれよりはるかに複雑です。というのは、波は、各ピークローブが接触している図10に示されるような空間で屈折しないためです。DTXおよびDRXの利得の組合せが最適化されると、最大のエネルギー伝達がTxとRxアンテナ間の直線経路で行われるため、hの高さにおいて3mの放射距離離れてピーク信号がもたらされます。この地点で、センスアンテナのピーク信号がアンテナに対して実現し、基準またはDUTが回転され、図11の「プロット面」に対するアンテナプロットが得られます。

図11. 2つのアンテナの間に発生するピーク電界

図11. 2つのアンテナの間に発生するピーク電界

基準アンテナとダイポールの電界パターンは周波数に応じて様々に動作するため、高調波のプロセスも繰り返す必要があります。ダイポールは、高調波において追加利得とスプリアスローブを備えています。このため、全測定周波数で1/2λを維持するためにダイポールを再調整する必要があります。使用する基準ダイポールは、測定波長に手動で調整できるように伸縮するエレメントで構築されました。波長が伸縮範囲外の場合は、次のサイズのダイポールが使用されました。図7を参照してください。

以下に示すのは、アンテナ測定に使用された実際の較正係数の図です。表1内の項目はすべて、試験家屋における50Ωでの測定値です。

表1. 較正係数の基準値
Freq
(MHz)
Sig Gen
(dBm)
Dipole Rx Level
(Vertical dipole)
(dBµV)
Dipole Rx Level
(Horizontal dipole)
(dbµV)
Isotropic factors
V H
315 16 96.9 98.4 94.7 96.2
433 16 94.9 94.7 92.7 92.5
630 16 89.1 92.2 86.9 90.0
866 16 88.2 86.9 86.0 84.7

ダイポールRxのレベルは、50ΩでTx基準ダイポールからスペクトルアナライザで測定されたRF電圧です。実際の測定値から2.2dBを引くと、等方性Txソースの場合のように受信レベルが得られます。

等方性係数 = Rxレベルダイポール - 2.2dBによって、等方性アンテナに対するRxレベルが得られます。

電界強度値を得るには、アンテナ係数AFと同軸ケーブル損失も考慮する必要があります。それについてはすべて後述します。


1.4. 偏波に関して


水平偏波(H)、垂直偏波(V)、および円偏波(C)はすべて、垂直成分または水平成分がゼロであるか、あるいは垂直および水平成分が互いに等しい楕円偏波の特殊な場合です。ただし、垂直偏波、水平偏波、または円偏波は通常、「楕円」と呼ばれず、むしろ垂直偏波、水平偏波、または円偏波以外の場合が楕円として分類されています。

使用時に、完全ではないアンテナに発生する偏波に関する主な考慮事項が2つあります。最初の考慮事項は、完全に対称でない3次元を占める空間ではどんなものも対称でない全体にわたって電位差をもたらすことです。

図12. やや楕円に偏波された電界の励起

図12. やや楕円に偏波された電界の励起

もう1つの考慮事項は、ある軸に沿ってあるオブジェクトを見ながら、別の軸に沿った別の視点からもそのオブジェクトを確認することができるという点です。一例は、図12の視点からの直線的に偏波された基準ダイポールに対して下に突き出たセンスアンテナです。ダイポールエレメントは、水平および垂直成分をともに備えています。水平または垂直位置でセンスアンテナが受け取るエネルギー量は、アンテナの非対称性だけでなく、基準またはDUTに対するセンスアンテナの「見る角度」にも左右されます。図13を参照してください。

図13. 見る角度の関数としてのセンスアンテナの偏波

図13. 見る角度の関数としてのセンスアンテナの偏波

幸いにも、我々はダイポール規格を基準としたピーク電界のみに関心があり、DUTとダイポールによく発生するどのようなシステム損失やエラーも除去されます。このため、すべてが垂直または水平半波ダイポールを基準とするため、測定が大幅に容易になります。重要な点は、水平および垂直アンテナを測定しましたが、予期しない交差または逆の偏波電界が存在する場合があるということです。


1.5. 3mの距離での電界強度の推定


電界強度の推定は基準ダイポールにとって重要ではありませんが、メートル当りのµVで論じる際に理論電界を推定するのに役立ちます。DUTの表面全体の周りの電界強度を完全に把握することなく、DUTの電界強度を推定することはできません。このことは、ダイポールの場合はよく理解されています。というのは、等方性ソースを予測して、次に等方性に対する2.15dBの指向性利得を追加することから始めることができるためです。

付録Aにおける関係を考慮すると、3mの電界強度は次のようになります。

表2は、16dBmに設定された信号発生器で駆動されるダイポールの場合の上記から計算された電界強度を示しています。

表2. 自由空間におけるFおよび2Fでの100%効率の半波ダイポールの最大電界強度

1.6. 水平偏波と垂直偏波の電界変動


図14. 水平および垂直偏波のグランド上のダイポール指向性の影響

図14. 水平および垂直偏波のグランド上のダイポール指向性の影響

垂直アンテナで生成される電界は、水平アンテナ(水平ダイポール)で生成される電界を下回ります。これは、エネルギーは360度の全域にわたって反射されるためです。エネルギーは垂直軸の周りで完全に分散されるため、グランドバウンス(垂直ダイポール)の影響も少なくなります。水平アンテナの場合は、ピーク電界はダイポールに対して垂直です。ピーク電界の一部はグランドに向き、グランドで反射されます。その結果、指向性からの利得が向上し、グランドバウンスからの干渉が増大します。このため、垂直および水平電界の両方を測定します(図14)。


1.7. 近傍界(3m)におけるグランドバランスの考慮


近傍界(3m)におけるグランドバランスの推定に関する重要な考慮事項が2つあります。まず、上記の表2の電界強度は等方性ソースから得られたため、ダイポールは自由空間も基準にしています。図10に示されるように、グランドによって電界は影響を受け、エネルギーを反射することによってその影響はより強くなります。自由空間における理想的ダイポールおよび300MHzにおけるグランドから(地上高)1mの半波ダイポールのシミュレートされた近傍界強度において以下で示されるように、EZNECソフトウェアは近傍界と遠方界での電界強度を推定することができます(図15および16)。また、上空へのローブの発射角度はグランドからのアンテナ高に非常に影響を受けやすいことにも注意してください。

次に、0.4V/mは400,000µV/mに相当し、これは自由空間の場合でもFCCがパート15.231で許容するものよりもかなり上回っています(付録B参照)。グランドからの反射によって事態はさらに悪化します。ただし、標準的なトランスミッタ部品は約7dBm~13dBmです。RKEデバイスのアンテナ効率は小型サイズが原因で約5%と極めて低いため、これらの部品はFCC規則には違反していません。低効率は-13dbの出力損失をもたらすため、デバイスはFCCに適合するようになります。ダイポールの効率は100%にも迫り、非常に優れているため、大きな電界強度値をもたらします。

第2次高調波など、315MHzおよび433MHzの電界強度におけるグランドバウンスの理論的な影響を検討するために、NECは3mの距離で近傍界を推定しました。この分析は、グランドから(地上) 1mの基準ダイポールにもたらされた表2からの実際のRFレベルを考慮しました。

図15. 高さ(Z)の関数としての3mの距離での水平ダイポールの電界強度のEZNECシミュレーション(315MHzおよび630MHz)

図15. 高さ(Z)の関数としての3mの距離での水平ダイポールの電界強度のEZNECシミュレーション(315MHzおよび630MHz)

図16. 高さ(Z)の関数としての3mの距離での水平ダイポールの電界強度のEZNECシミュレーション(433MHzおよび866MHz)

図16. 高さ(Z)の関数としての3mの距離での水平ダイポールの電界強度のEZNECシミュレーション(433MHzおよび866MHz)

図15および16から、自由空間における理想的ダイポールとグランドバウンスから発生するピーク電界の差は次のようになることがわかります。

グランドバウンスからの利得は2つの正弦波面の合計によって決まるため、周波数全体にわたって同じではありません。また、グランドからのアンテナ高が上昇するにつれて、直接波と反射波は1/r2だけ低減しますが、ターゲットにおけるそれらの組合せは1/r4だけ低減します。近傍界と遠方界とのNECシミュレーション結果は、近傍界に比べ遠方界では標準で約1dB高い利得を示しました。表3Hおよび3Vの次の結果は近傍界の結果です(3m)。

表3H. 近傍界でシミュレートされたグランドバウンスから発生する、グランドから(地上) 1mにおける3mのダイポールRMSピーク電界強度(水平偏波)

表3V. 近傍界でシミュレートされたグランドバウンスから発生する、グランドから(地上) 1m (中心)における3mのダイポールRMSピーク電界強度(垂直偏波)

注:表3と本書の他の場所で示される電界強度のデータは例示用です。このデータは、潜在的に危険な電磁暴露を判定するほど正確または包括的ではありません。


1.8. アンテナシステム用の擬似適合試験


315MHzおよび433MHzにおけるアンテナ測定に適合マスクを使用する場合は、付録Bの最大電界強度を補間する必要があります。周波数を式に代入すると、表4および5の次式が得られます。

表4. 3mの距離で315MHzの場合のパート15.231の補間電界強度
Emission Type Field Strength of Fundamental µV/m and dBµV Field Strength of SpuriousµV/m and dBµV
Exceed Periodic EuV/m = 2417
EdB(uV/m) = 67.7
EuV/m = 241
EdB(uV/m) = 47.7
Periodic EuV/m = 6042.7
EdB(uV/m) = 75.6
EuV/m = 604.2
EdB(uV/m) = 55.6
表5. 3mの距離で433MHzの場合のパート15.231の補間電界強度
Emission Type Field Strength of Fundamental µV/m and dBµV Field Strength of SpuriousµV/m and dBµV
Exceed Periodic EuV/m = 4384.8
EdB9uV/m = 72.8
EuV/m = 438.5
EdB(uV/m) = 52.8
Periodic EuV/m = 10960
EdB(uV/m) = 80.8
EuV/m = 1096
EdB(uV/m) = 60.8

表3のピーク電界を使って、それをFCC適合の例と見なして、表4および5の第3列を表6Aおよび6BのµV/mおよびdBµVに変換します。

表6A. 超過した周期擬似適合の例(水平および垂直偏波)

表6B. 周期擬似適合の例(水平および垂直偏波)

グランドバウンスの影響を考慮し、FCC 15.231に基づいて適合させると、高効率の半波ダイポールの放射を基本波の場合は約33dB~49dB、高調波の場合は約54dB~69dBだけ低減させる必要があることを表6Bは示しています。同じ調整は垂直偏波の場合にも該当します。垂直アンテナの360度全方向性パターンからの利得の低減と双方向ダイポールからの利得のために、放射レベルは低減します。


1.9. センスアンテナの係数と基準測定誤差の推定


表1に示されるような50Ωを前提にして、スペクトルアナライザは受信出力を測定し、測定電圧を容易に計算することができます。ただし、表2の電界または送信出力の多くが受信アンテナによってどのように取り込まれるかは単純ではありません。表1を表2と等しくさせるために、関係はアンテナ区域およびLPセンスアンテナのアンテナ係数、AFE (V当り1V/mまたは1/m)のリンク損失になります。ネットワーク理論を電界理論に応用することによって、アンテナ係数は、物理デバイスを測定するための実用的手法としてEMC電界測定で広く使用されています。

Gant = センスLPアンテナの線形利得

Aaperture = ミスマッチとアンテナ効率を考慮したアンテナの実際の開口

dBでの項の場合は、

アンテナは電界を取りこみ、それを50Ωのシステムで測定される電圧に変換するために、次の共通式が使用されます3。磁気的に結合したまたは50Ω以外の環境の場合は、AF式は該当せず、上の式とはかなり異なります。最後に、レシーバの測定電圧から電界レベルを求めることができます。

Eincident = VRX + AFE + CoazLoss

Eincident (dbuV/m) = 測定値からのアンテナにおける電界

VRX (dbuV) = (50ΩのRx出力からの)測定電圧、表1の「ダイポールRXレベル」

AFE (dB1/m) = アンテナ係数、センスアンテナの較正データ(認証許容値 = 1.5dB)

CoaxLoss (dB) = センスアンテナからレシーバまでの伝送ラインの損失

NECシミュレーション値を比較し、測定値に対するグランドバウンスの影響を考慮して、次の計算誤差が得られます。

計算誤差 (dB) = ETX - Eincident

ETX (dBuV/m) = グランドバウンス係数など、垂直または水平基準ダイポールのシミュレートされた電界、表6の「NEC Est. Peak near Field, H = 1m」

表7H. 測定電界強度の解明と水平偏波基準ダイポールのシミュレートされたグランドバウンスTx値との比較

表7V. 測定電界強度の解明と垂直偏波基準ダイポールのシミュレートされたグランドバウンスTx値との比較

2. 被測定デバイス(DUT)の測定

2.1 ミスマッチの考慮事項


リースした試験区域で試験時間を最小限に抑え、アンテナの再配置と機械的変更の追加による誤差の発生を回避するために、アンテナ(DUT)はマッチングされませんでした。反射係数が大きいため、DUTに関する大きなミスマッチ損失があります。ミスマッチ損失はダイポールに対するアンテナパターンにあまり影響を与えませんが、電界強度には大きな影響を与えます。アンテナの測定反射係数S11が与えられると、アンテナをマッチングさせずに関連するミスマッチ損失を求めることができます。この係数は、データプロットに含まれています(図8)。

表8. ミスマッチ損失の補正

2.2. DUTにもたらされる出力(Pアンテナ)


16dBmに設定された信号発生器によって、ミスマッチ損失と同軸ケーブル損失の後に出力がDUTアンテナに実際にもたらされました。基本波とその第2次高調波がともに表9に示されています。

アンテナにもたらされる出力 = Psignal generator - Pcable loss - Pmismatch loss

表9. アンテナ出力

2.3. DUTの試験機器および試験マトリックス


表1の較正係数が測定された後に、基準ダイポールはDUTに置き換わり、基準と全く同じ方法で測定されました。垂直および水平偏波の基本波と第2次高周波用に2組の測定が実施され、オープンおよび短絡の場合のループアンテナの電界パターンが得られました。データは図17に示されるように分類され、次の各値が定義されました。

アンテナ種類 | 位置 | センスLP偏波 | 帯域

具体的には、SFV3 = 短絡アンテナ | フラットな位置 | 垂直LP | 315MHz

図17. データ試験マトリックスおよびフラットなアンテナ位置

F図17. データ試験マトリックスおよびフラットなアンテナ位置

例の円とダイポール基準は図18に示されています。

  • 生データ(灰色の線)はアンテナ区域で測定されます。
  • 修正されたS11 (黒い線)は生データに追加されたミスマッチ損失です。
  • 利得の円(外側)は3dBdの利得基準とダイポールです。
  • ダイポール基準(0dBd)の円は、ダイポールの基準に応じてユニティゲインとして較正されます。電界強度(dB)、0dBdを下回るものはすべて、エネルギーが他の場所に向けられるかまたは効率が低いためにダイポール以下です。この値を上回るものはすべてDUTのアンテナ指向性によってダイポール以上の利得です。

図18. 試験プロットおよび凡例

図18. 試験プロットおよび凡例

3. ピーク電界の測定

3.1. 測定データ


4. まとめ

4.1. 概要


どの場合でも、基本波には、ダイポールに対する電界強度の関連損失があります。これは、効率の差と小さな開口に起因すると予測されます。基本波の電界パターンは通常は360°で、ダイポールより標準で10dB~20dB下回り、これはスモールループアンテナの5%または-13dBの予想効率に相当します。

一例のフラットに設置された短絡ループのSFV3は、垂直偏波において-3dBdと完全369°全方向性パターンという卓越した結果をもたらしました。これは好都合です。このようにして通常、アンテナはキーフォブ内に配置されます。ただし、電界は3次元です。ピーク電界が測定されましたが、これはRxを対象にする目的のローブでない場合があります。

ほとんどの場合は、高調波は基本波を大幅に上回る利得を備え、本質的にミスマッチ損失は基本波よりも低減します。場合によっては、第2次高調波は、図6の基準ダイポールに対する利得を実際に備えています。高調波の場合はループが電気的に長くなるにつれて、アンテナは指向性を持ち、効率が向上するようになるため、このことはあまり驚くべきことではありません。また、電界パターンは基本波に比べ高調波の場合は均一性が低下し、予測が困難なため、波長が短くなるに従ってボード上のあらゆるものがアンテナに対して機能ようになることが示されます。

オープンループとショートループとのシミュレーション結果を比較すると、測定データもオープンアンテナのシミュレーションを実証しています。基本波と高調波の電界パターンはショートループに比べやや均一的です。このことは実際面では興味深いですが、アンテナ自体が向上するのではなく、同軸ケーブルシールドはアンテナの高効率と平坦性において重要な要素を占めることを思い起こしてください。また、波長が短くなるにつれて、アンテナ効率も向上します。433MHzの電界は標準で-10dBdを上回り、315MHzの電界はおよそ-15dBd~-20dBdです。ただし、平均して433MHzを上回る電界強度である高調波は除外します。

この記事のパート1のシミュレーションから識別されたように、ショートループの場合はより複雑です。ほとんどの場合、電界パターンは、前に見える電界の後ろにヌルを持っています。パート1のシミュレーションは、同軸ケーブル、ループ電流、およびグランドが相互に作用して、最終結果をもたらすことを示しています。電界強度は、オープンループの場合に比べ平均で10dB低減します。低減しますが、ほとんどのエネルギーはループ内にあり、同軸ケーブルによる測定誤差ではないため、おそらく実際面ではより現実的です。また、ピーク電界強度は、約5%という多くの理論的効率推定値にマッチングしています。

ピーク電界を観測する時は、センスアンテナはループを見下ろしています。また、ループは水平位置で同軸ケーブルから給電され、次に信号発生器に対して垂直に下降します。これらの要素が組み合わされ、交差偏波電界がもたらされます。実際にトランスミッタはアンテナ内に内蔵されているため、同軸ケーブルはありません。


4.2. 結論


グランドと試験機器は、アンテナ測定において重要な要素を占めます。すべての要素を考慮しても、予測結果を実際の測定にマッチングさせることは極めて困難です。設計または事前適合試験のみが必要な場合は、アンテナ試験区域の構築は難しくなく、実施可能です。一部のアンテナ電界試験では、回転台、ロープ、プーリ、および標準的なラボ機器を使って、構築されます。ただし、注意事項があります。理論結果と予測結果を検討するためにシミュレータを使わずに、こうした電界試験結果を分析すると、判断を誤らせるおそれがあります。最終的に多数の微妙な要素が測定に影響を与えるため、信頼性の高い適合試験は経験豊富な認定されたラボに委ねる必要があります。

アンテナシミュレータは、起きていることの概要を得るのに役立つツールです。ただし、較正中にピークを読み取っても、Z軸上の一部を読み取るだけです。アンテナシミュレーションは、スモールループに必要なすべての情報を提供するほど正確ではありません。アンテナを正確に測定するには、Z軸に対応し、X-Y電界パターンの一部を取得し、グランド効果を考慮する必要があります。ピーク試験と比べると、こうした作業は手作業で行われ非常に骨が折れますが、シミュレートするのは全く容易です。FCCはピーク電界のみに関心があるため、適合用の最大電界強度を求め、電界を意図した目標に応じて最適化するだけで構いません。シミュレーションと測定は連携して、設計を最適化し、エンジニアがアンテナパラメータを把握し、FCC規則に適合するピーク電界を見つける手助けをします。

付録A

A.1. 3mの距離への電界強度の関連付け


FCCは3mの距離で測定された電界強度を全般的に規格化しましたが、場合によっては3mの距離が理想的でないこともあります。

自由空間においては等方性ソースの放射は空間内の点として始まり、次に定媒体の3次元内を均等に進みます。放射の伝搬は、そのエネルギーが球の波前面または波表面にだけ含まれている、時間の経過とともに増大する球のように見なすことができます。定量の出力から始める場合は、その出力は増大する球の面上に絶えず再配分されます。出力と距離の関係は極めて単純であり、簡単な幾何学で容易に導き出すことができます。

球の表面の面積 = 4πr2

A1およびA2内の出力は等しくなります。これは、同じ点から発生するためです。ただし、これらのエネルギー密度は、面積の変動に反比例します。

r1を1に設定すると、球の面積は1/r2ずつ増大することが判明します(図A1)。

図A1. 放射距離r1とr2間の球A1とA2の表面積の比較

図A1. 放射距離r1とr2間の球A1とA2の表面積の比較

出力密度は、次式で関連付けられます。

ただし、FCCはパート15の大部分の節では出力に関心がなく、むしろ電界強度に関心があります。出力は、インピーダンスが120πまたは377Ωの自由空間を進むため、オームの法則を使って電界を計算することができます。

代入によって、距離がr1からr2に変わるか、またはr2が3メートルの距離から基準にされると、電界強度と出力の関係を求めることができます。

例えば、3mの距離で10,000µV/mに制限される場合は、30mの距離でそれに対応するレベルは次のようになります。

付録B

B.1. 周期的RKE伝送に関するFCCパート15の電界強度の考慮事項の概要


注:次の解説は電界強度試験デバイスのガイドとして役立ちますが、規則の変更や解釈のため正確でなく、または最新でない場合があります。適合に関しては、公式のFCC規則を参照してください。


B.2. 一般要求事項


パート15.231にFCCは、アプリケーションに応じて各種制約事項を備える40.66MHz~40.70MHzおよび70MHz以上で利用可能な周期的動作を用意しています。対象とする最も一般的な2つの周波数は、RKE型デバイスに使用される周波数の315MHzと433MHzであり、これらは(米国以外の)他国でもよく使用されています。

電界強度放射に関してトランスミッタを評価する際に、作業を次の3部に区分することができます。

  1. パート15.231でアプリケーションに許容される基本波
  2. パート15.231で許容されるスプリアス発射
  3. パート15.209で規定される制限とともに、パート15.205での保護帯域におけるスプリアス発射

製品を評価する際には、ディジタルデバイスが実装されている場合には通常、電界強度測定がさらに必要です。このアプリケーションノートの場合はトランスミッタのみに関心があるため、ディジタルデバイスの試験と測定は取り扱いません。ただし、ディジタルデバイスをアナログトランスミッタに追加すると、トランスミッタを管理するルールに影響を与える場合があることに注意してください。

遠隔制御デバイスによく使用されるISM帯以外の周波数が2つあります。これらの帯域の規則は綿密に作成され、制御用にランダムな周期性バースト以外の通信を禁止しています。これらの周波数は許可されたサービスと基本的に共用され、その使用は超短距離および短期間の伝送に関して非干渉基準で許容されています。規則は、これらの帯域を占める許可されたサービスへの干渉を最低限に抑制するために正文かされています。315MHz帯は主に政府機関で使用され、433MHz帯はアマチュア(アマチュア無線)と政府サービスで共用されています。このため、変動する信号強度と競合する帯域使用に対して通信を確保するためにコードを反復する変調の使用は珍しくありません。ただし、有害な干渉を回避するために放射の時間と期間に対する厳しい制限があります。

単純化して示すと、FCCのパート15.231は、次の2つの条件下で電界強度を分類しています。

  1. 周期的放射、15.231 a-d―周期的でランダムな超短バースト
  2. 超過した周期的放射、15.231e―最大1秒までの周期的なバースト

こうした条件で各種制限が基本波およびスプリアス発射にともに適用され、エンドアプリケーションによっても大幅に異なります。より高いレベルに適合するために、パート15.231(a)は伝送放射および周期性の期間に関して厳しいアプリケーション定義を規定しています(表B1)。また、電界強度は周波数の関数でもあり、対応する電界強度を求めるために直線的に補間する必要があります。

表B1. 3mの距離で260MHz~470MHzに対してFCCパート15.231で許容される電界強度
Emission Type Field Strength of Fundamental (µV/m) Field Strength of Spurious Emissions (µV/m)
Exceed Periodic 1500 to 5000 150 to 500
Periodic 3750 to 12500 375 to 1250

値を代入すると表B2、B3a、およびB3bに表す以下の方程式となります。

表B2. 3mの距離で260MHz~470MHzの場合のFCCパート15.231の補間電界強度
Emission Type Field Strength of Fundamental(µV/m and dBµV) Field Strength of Spurious(µV/m and dBµV)
Exceed Periodic EuV/m = 16.67*ƒMHz - 2833.33
EdB(uV/m) = 20log(16.67*ƒMHz - 2833)
EuV/m = 1.667*MHz - 283.33
EdB(uV/m) = 20log(1.667*ƒ - 283.3)
Periodic EuV/m = 41.67*ƒMHz - 7083.33
EdB(uV/m) = 20log(41.67*ƒMHz - 7083)
EuV/m = 4.167*ƒMHz - 708.33
EdB(uV/m) = 20log(4.167*ƒMHz - 708.3)
表B3aおよびB3b. 3mの距離で260MHz~470MHzの場合のFCCパート15.231の補間電界強度

UHF帯で動作するデバイスに関するFCCパート15.33では、測定結果は第10次高調波まで提供する必要があります。このため、どのような予備試験を検討しても、基本周波数を大幅に上回って測定することが重要です。デバイスがディジタルデバイスを内蔵している場合は、その放射についても製品を調査する必要があります。

具体的なFCC規則パート15.33

こうしたFCCのパートで許容されるトランスミッタ放射は、ドア自動開閉装置、アラーム、および非周期的なスイッチ制御で使用されるような実質的にランダムで突発的なバーストデバイスです。FCCパート15.231では、音声やデータなどの連続伝送が許容されないのと同様に、おもちゃの制御などアプリケーションにおいて制御情報の多いトラフィックを禁止していることに注意してください。

パート15.231の規定


B.3. FCCおよび試験方法


レシーバが受け取るスペクトルエネルギーに影響を与える変調スペクトル、分解能帯域幅、IFフィルタリングなどは、測定に影響を及ぼします。また、パルス信号のピークおよび平均制限値のCISPR出力平均化など、パルスデータの処理方法も重要です。FCCパート15.209は、多くの航空無線測位や他の保護デバイスが使用される500kHz未満の少数の選ばれた帯域だけでなく、1000MHzの上下の放射用の2種類の試験方法を用意していることに注意してください。1000MHz以下の測定の場合は、測定デバイスはCISPR準ピーク検出器を使用する必要があり、1000MHzを上回る場合はピーク放射のみが測定されます(図B1)。CISPR (International Special Committee on Radio Interference/国際無線障害特別委員会)は、International Electrotechnical Commission (IEC/国際電気標準会議)の各国内委員会と無線障害を回避するために測定基準の作成に取り組むその他の各組織から構成される非政府グループです。

図B1 CISPRの係数の例

図B1 CISPRの係数の例

CW (閉世界)条件の場合は、各検出方法に差がありません。ただし、パルス放射では、パルスのデューティサイクルおよび繰返し周期のために差があります。場合によっては、準ピークと平均制限値間の差は、1.8kHz4の繰返し周波数で最大13dBになる場合があります。ピーク検出は、デューティサイクルにかかわらず最大ピーク出力をチェックするのみです。平均出力の検出は、放射のデューティサイクルを考慮しています。準ピークでは、立上がりエッジのアタックタイムが超高速ですが、減衰時間が非常に長い検出に時定数を適用します。その結果、繰返し周期の上昇とともに準ピーク検出下で測定出力が上昇します。

基本的に、FCCは、同様にスペクトルを使用しないパルスの繰返しに寛大です。このため、FCCは、他のサービスへの干渉の実現を最低限に抑制するために情報の伝送を減少させた信号への出力の若干の増加を許容しています。いずれにしても、どの種類の放射試験も実施する際には、FCC規則を参照し、認証されたラボと連携することが重要です。


B.4. 保護帯域


FCCパート15では、その意図は、優先的な認可または認証されたサービスへの有害な干渉を回避しながら、無認可サービスの低レベルの放射を許容することであるということができます。スペクトルに関しては、公共および地方自治体のアプリケーションに対してはFCCが管理しているだけでなく、米国連邦および軍事アプリケーションの場合はNTIA (National Telecommunication Information Authority/米国商務省電気通信情報局)も管理しています。

FCC―
NTIA―
National Telecommunications Information Authority (米国商務省電気通信情報局)

315MHz~430MHzのスペクトルは大量に割り当てられています。生命と安全を維持するのに不可欠な、または米国国民や世界の安全に関係するデバイスに広く使用されています。特に無線測位は高度に保護されたサービスです。その一部は極秘で、米国で販売される製品からFCCによってすべて保護されています。例えば、GPSは1.575GHzで米国国防総省(DOD)によって運用される重要な無線ナビゲーションサービスであり、1435MHz~1626.6MHzのFCC規則に従って保護されています。アンテナ測定中に無許可の伝送に対する法的問題がある間は、こうした保護された国務に対する干渉を回避するように特に注意する必要があります。

より具体的な詳細

これらの保護帯域では、基本波は許可されません。こうした制限帯域においてデバイスからの放射がある場合は、放射されるものを問わず、FCCの規則に従って許容レベル内であるようにFCCパート15.209に特に注意してください。

FCCの試験ラボでは、こうした保護帯域におけるデバイスの試験時にさらに別のFCCの表をチェックします。

上記は、パート15.209からの抜粋です。この規則は、特にバンド端に関する仕様と要件へとさらに続きます。詳細については、リンクを参照してください。

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